Marshall Origin5レビュー【カフェ演奏もこなせる良コスパチューブアンプ】
5w/8inchスピーカーとスペックだけ見ると可愛い印象ですが、スピーカーのサイズを超えた質感とダイナミクスを感じて小規模なライブだったら使えるんじゃないかと思って実戦投入してみました。
自宅用をメインに想定した機種だとは思いますが、生のサックスには全然問題なく合わせられたので、カホンと上物程度の編成であれば小さいライブもこなせます。ドラムは流石にきついと思う。
実売価格4万円弱で買えるし、初めてのチューブアンプにはちょうど良いんじゃないでしょうか
スペック
メーカー公式HP
出力:5w/約0.5w 切り替え可、1/4"スピーカー出力
入力:1/4"楽器インプットx1,フットスイッチインプットx1
スピーカー:8インチ,16Ω(Celestion Eight-15)
重量:9.4kg
サイズ(mm):466x369x191/W x H x D
エフェクトループ:○
コントロール:ボリューム、ブースト(ボリュームノブのプッシュプル)、ティルト、3バンドEQ(ベース・ミドル・トレブル)、出力切り替え(High/Low)
プリアンプ部:ECC83x2
パワーアンプ部:EL84x1
オールドマーシャルの流れを汲むシリーズなのでGainやリードチャンネルなどは付いていませんが、エフェクトループとブーストを付属のフットスイッチで切り替えられたりと、実用的な仕様になっています。
重さは10kgきってますね。
自宅練習向きを謳ってますが、小規模ライブ用に小型のコンボアンプを探しているのであれば、下手なモデリングアンプより軽いまであるので選択肢に入れて良い機種かと思います。
リバーブがビルトインされていなかったり、ブースト量もコントロールできるわけではないので、結局別で歪み系と空間系は1系統づつ用意することにはなりますが…この値段でそこまでのわがままは言わない。笑
僕はTSとZOOMの空間系マルチストンプ(MS-70CDR)だけというミニマルセットでライブに臨みました。アンプのキャラが素直なので必要に応じて歪みがもう一台くらいで全然マルチに対応できます。
他、詳しい仕様はメーカーサイトに乗ってるのでリンクから飛んでチェックしてみてください。
音量感
実際に弾かないとわからないところなので、自宅用に検討しているみなさんは気になっているとこでしょう。
5wといえど真空管なのでそれなりのパワー感があるんですが、パワーリダクションがついて、Lowワッテージにすればつまみをいじらず音量だけ一回り落とせる仕様になっています。
…います。います…が!笑
Lowにスイッチ(約0.5w)に入れても結構音でかい。
防音なしのマンションとかで練習用って考えると、ゲインを稼げないので真空管の良さを活かしきれないかもしれない…マスターボリュームがないのが歯がゆい所。
近隣との関係がシビアな環境であれば、そこらへんは最近覇権を握っているYAMAHAのTHRのような機種に軍配が上がるでしょう。
ある程度音が出せるのであればちょうど良い音量感とサイズです。
練習もきちんと本物の真空管でやりたい人にもこの価格帯から選択肢があるのは凄いことだと思います。
Highワッテージ(5w)だとボリュームのメモリ12時くらい、ギター側でもボリュームを半分くらい絞ってゲインコントロールできるような状態でも、生音のサックスに余裕でついていけるくらいにはパワーがあります。
フルアップさせた歪みをマイキングで録りたいってなると要防音設備ですね。
クリーン〜クランチが得意
ワンボリューム・ワンチャンネル仕様なあたりハイゲインな現代マーシャルが好きな人や、アンプ直でオールドマーシャルのフルアップした時の歪みが好きって人には向いてないアンプかなとは思います。
仕様からみて取れるように外部エフェクトでフォローしてあげるような使い方がぴったりくるアンプで、サウンドチューニングにも「かつての名機を現代のニーズに答える形で作るならば」といった意図が感じられます。
サチュレーションやコンプがかかり始めるピークから察するに、そもそもみんなブースター踏むことを見込んでのチューニングでしょうか。
ボリュームコントロールが手元でしっかりできて、チャンネル切り替えではなくゲインの差し引きでサウンドを組み立てる人からすると
「この値段でこれを出してくるとは…やるなマーシャル、流石です。」
と納得できるはず。
競合機種との比較
自宅練習機として
自宅練習という点のみにフォーカスすると、2020年2月現在だとYAMAHAの一人勝ちといった状況でしょうか、次点でVOXのPATHFINDERが根強く人気があるようです。
真空管アンプとは別のベクトルで人気を勝ち取った製品比べたところで…というのはありますが、やっぱり自宅で真空管のタッチを確認できるかできないかは大きいと思います。
デイリーユースはそういった製品を別で持っておいて、タッチや音色を含めた練習をする際はチューブアンプを使う等、使い分けでアンプを複数持つのが理想なのかもしれません。
オールチューブ小型コンボアンプとして
小型でオールチューブというとFenderのBlues Jr.が代表機種ですが、日本の一般的な住宅で使うにはオーバースペックだと感じる人が大半かと思います。
小箱でやるには良いアンプなんですが、個人でそれだけの為に持つにはちょっと重い荷物かな…というのが個人的な感想。(そもそもメインの楽器ギターじゃないし。)
自宅での使用も視野に入れつつとなると、アンプとしての実力と値段バランスがとても良く、「ロックギターアンプ」ブランドのマーシャルとしてだけではなく、万人におすすめできるアンプではないでしょうか。
おわりに
もはやモデリングアンプの類が覇権を握りつつあるご時世ですが、チューブアンプでしか得られないタッチレスポンスというのは間違いなく存在します。
どれだけ高級機種であっても、デジタルモデリングである限り電気信号増幅の方式の根本が違うので、聞いてる側が判別がつかなくても演奏者にとっては「似て非なるものだ」という違和感を克服するには至っていません。
管理がソリッドステートより手間だったり、プロでもない限り個人で所有するのは倦厭されてるきらいまであるチューブアンプですが、ギターを弾く喜びを改めて感じさせてくれるのもまたチューブアンプのみがなせる技術でしょう。
ライブハウスやリハーサルスタジオで置いてあるようなフラッグシップモデルだけではなく、大手のアンプメーカーがこういう手に届きやすい製品を出してくれるのは、音を出すこと自体が楽しいといったような根源的な喜びを忘れないでほしい、といったメッセージなのかもしれませんね。